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コラム COLUMN

高齢化社会の進行に伴い、介護士という職業の社会的価値はますます高まっています。
介護を必要とする高齢者の生活を支えるその姿勢は、まさに日本の福祉の根幹を支える尊い仕事です。しかし、現場の実情を覗いてみると、理想と現実のギャップに苦しむ介護士が多くいるのも事実です。

本コラムでは、「転職の多さ」「退職金の少なさ」「身体的負担」、そして「資産運用の必要性」といった現実的な課題に触れながら、介護士が自分の未来を守るための考え方について解説していきます。

介護士はなぜ転職が多いのか?

厚生労働省の調査によると、介護業界の離職率は全産業平均を上回る傾向にあります。
理由はさまざまですが、以下のような声が多く聞かれます。

  • 人手不足による業務の過重
  • 賃金の低さ
  • シフトの不規則さによる生活リズムの乱れ
  • 人間関係のストレス
  • 身体的な負担による健康不安

とくに、腰や膝への負担、夜勤による自律神経の乱れなど、身体を酷使することが原因で退職せざるを得ないケースも多いのが現状です。
こうした背景から、複数回の転職を経験する介護士は珍しくありません。

転職が多いことで退職金が不利に

日本の退職金制度は、「勤続年数」が大きく影響します。
一つの事業所に長く勤務すればするほど、退職金は多くなります。
しかし、転職を繰り返すことによって、「10年働いても、3年×3事業所+1年」というように、分断された勤務歴となってしまい、トータルでの退職金が大きく目減りするのです。

また、退職金制度自体が存在しない小規模な施設も多く、実際には退職金を一切受け取っていない介護士も珍しくありません。

その結果、老後資金を準備するタイミングを逃し、「働き続けなければ生活できない」という状況に追い込まれるリスクもあります。

身体を壊しやすいという職業リスク

介護士は、身体的・精神的に非常に負担の大きい仕事です。利用者の身体を支えたり、移動介助を行ったりする中で、慢性的な腰痛や関節痛を抱える人が多くいます。
また、夜勤による睡眠の乱れやストレスからくる自律神経の不調、さらにはうつ症状に悩まされることも。

身体を壊すことで一時的な休職や、最悪の場合には職場を離れることを余儀なくされる可能性もあります。

こうした「就業不能リスク」を軽視してはいけません。働けない期間の生活費、治療費、そして将来の収入減少への備えとして、「働けない時期も見越したマネープラン」が必要です。

だからこそ必要な「資産運用」

上記のようなリスクに備えるためには、ただ貯金するだけでは不十分です。限られた収入からでも、資産を“働かせる”という視点が必要になります。

以下は、介護士が検討すべき資産運用の方法の一例です。

① 積立NISAの活用

少額から始められる非課税制度。月1万円からでも始められ、20年間運用益が非課税。長期的な資産形成に有効です。

② iDeCo(個人型確定拠出年金)

老後資金の準備として最も税制メリットが高い制度。掛金が全額所得控除となり、節税しながら資産形成ができます。

※ただし、自営業やフリーランス、副業として働いている場合は上限額や制度の適用範囲に注意が必要です。

③ 変額保険や外貨建て保険

死亡保障を得ながら長期で資産を運用できる選択肢。ただし、リスクや手数料についての理解が必要ですので、信頼できる専門家との相談が重要です。

④ 就業不能保険の検討

もし身体を壊して働けなくなった時に、収入を保障する保険です。公的制度(傷病手当金など)では不足する場合の備えになります。

まとめ:将来の自分を守るために

介護士は人の命や生活を支える、かけがえのない仕事です。しかし、社会的には十分に報われていないという現実もあります。だからこそ、自分の未来は自分で守る必要があります。

身体のケアと同じように、「お金の健康」も意識して、資産形成を始めてみませんか?

毎月1万円でも、10年後・20年後には大きな差になります。

もし「投資は怖い」「何から始めれば良いかわからない」と感じたら、まずは貯蓄型保険やNISAといった“仕組みを作る”ことから始めてみましょう。人生100年時代。介護士として誰かを支えながら、自分自身の人生も安心して歩んでいけるよう、少しずつ備えていくことが何よりも大切です。