前回のコラムでは、万が一の死亡リスクに備える「収入保障保険」について解説しました。今回は、私たちが生きていく上でより身近なリスクである「病気やケガによる入院・手術」に備えるための「医療保険」についてお話しします。
「人生100年時代」と言われる現代、長生きすることは喜ばしいことですが、同時に病気やケガと付き合っていく期間も長くなることを意味します。医療技術は日々進歩していますが、それに伴い、私たちが自己負担すべき医療費の形も変化してきています。今回は、公的医療保険制度の基礎知識から、最新の医療事情に合わせた民間医療保険の選び方までを詳しく解説します。
目次
日本の公的医療保険制度は優秀だが限界もある
日本には国民皆保険制度があり、健康保険証を提示すれば、原則として誰でも医療費の「3割負担(年齢等により1〜2割)」で医療を受けることができます。さらに、1ヶ月の医療費が高額になった場合には、自己負担の上限額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」という非常に優れたセーフティネットがあります。
一般的な収入の方であれば、高額療養費制度を利用することで、1ヶ月の医療費の自己負担額は約8万円〜9万円程度に抑えられます。「それなら、わざわざ民間の医療保険に入る必要はないのでは?」と考える方もいるでしょう。確かに、十分な貯蓄があれば、医療保険は不要かもしれません。
しかし、公的医療保険制度ではカバーされない費用があることを忘れてはいけません。
全額自己負担となる費用
以下の費用は、高額療養費制度の対象外となり、全額自己負担となります。
- 差額ベッド代(特別療養環境室料)
:個室や少人数部屋を希望した場合にかかる費用です。1日あたり数千円から数万円かかることもあり、入院が長引けば大きな負担となります。 - 食事療養費
:入院中の食事代の一部(1食あたり460円など)は自己負担となります。 - 先進医療の技術料
:厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた治療(先進医療)を受けた場合、その技術料は全額自己負担となります。数百万円に上るケースもあります。 - 交通費・日用品代
:お見舞いに来る家族の交通費や、入院中に必要なパジャマ、タオルなどの日用品代も馬鹿になりません。 - 収入の減少
:会社員であれば「傷病手当金」が支給される場合がありますが、給与の約3分の2となり、収入は減少します。自営業やフリーランスの方にはこの制度がなく、収入減が直結します。
これらの「公的保険ではカバーされない出費や収入減」を補うのが、民間の医療保険の役割です。
医療事情の変化:入院の短期化と通院治療の増加
近年、医療保険を選ぶ上で絶対に知っておくべき重要な変化があります。それは「入院日数の短期化」と「通院治療の増加」です。
厚生労働省の調査によると、平均入院日数は年々短くなっています。医療技術の進歩や、国が医療費抑制のために入院から在宅医療・通院治療へシフトさせていることが背景にあります。かつては1ヶ月以上入院していたような手術でも、現在では数日〜1週間程度で退院し、その後は通院で治療を続けるケースが一般的になっています。
古い医療保険の落とし穴
この医療事情の変化により、一昔前に加入した古い医療保険では、十分な給付金が受け取れない可能性があります。
例えば、「5日以上継続して入院した場合に、5日目から給付金が支払われる(免責期間がある)」という古いタイプの医療保険に加入している場合、3日間で退院してしまうと、給付金は1円も受け取れません。
現代の医療保険は、この短期入院に対応し、「日帰り入院から1日目から保障される」タイプが主流となっています。
進化する医療保険:最新の選び方
では、最新の医療事情を踏まえて、どのような医療保険を選べばよいのでしょうか。以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
1. 入院給付金は「日額」から「一時金」へ
これまでの医療保険は「入院1日につき5,000円」といった「日額タイプ」が基本でした。しかし、入院が短期化している現在、数日の入院では受け取れる金額が少なく、差額ベッド代や交通費などの初期費用をカバーしきれないケースが増えています。
そこで近年人気を集めているのが、「入院一時金」を手厚くする設計です。「日帰り入院でも、入院したらまとまって10万円(または20万円など)を受け取れる」という特約(オプション)を付けることで、入院日数の短さに関わらず、当面の出費をしっかりとカバーすることができます。
2. 手術給付金と先進医療特約は必須
手術給付金は、所定の手術を受けた際に支払われる給付金です。入院中の手術だけでなく、外来(通院)での手術も保障対象となるものが主流です。
また、「先進医療特約」は絶対に付けておきたい特約です。月々百数十円程度のわずかな保険料で、数百万円かかることもある先進医療の技術料を実費(通算2,000万円までなど)でカバーしてくれます。コストパフォーマンスが非常に高いため、必須と言えます。
3. 通院治療への備えを検討する
入院が短くなり、通院治療が長引くケースが増えているため、退院後の通院治療を保障する「通院特約」の重要性が高まっています。特にがんなどの重い病気の場合、長期間にわたる通院での抗がん剤治療や放射線治療が行われることが多く、交通費や治療費の負担が継続します。予算に余裕があれば、通院特約の付加を検討しましょう。
まとめ
今回は、医療事情の変化に合わせた医療保険の選び方について解説しました。
- 日本の公的医療保険(高額療養費制度など)は優秀だが、差額ベッド代や先進医療費などカバーされない費用がある。
- 医療技術の進歩により「入院の短期化」と「通院治療の増加」が進んでいる。
- 最新の医療保険選びでは、「日帰り入院からの保障」「入院一時金の活用」「先進医療特約の付加」が重要ポイントとなる。
医療保険は、一度加入して安心するのではなく、医療事情の変化に合わせて定期的に見直すことが大切です。現在ご加入の医療保険が「今の医療」に対応できているか、この機会にぜひ証券を確認してみてください。
次回は、日本人の国民病とも言える「がん」に特化した備えである「がん保険」の重要性と、最新の治療を支えるための選び方について解説します。